今日の酒を旨く呑む

酒は努力した分きっと旨いはず。エンジニア見習いです。

【書籍】エンジニアリング組織論への招待

本書は以前読んだものだったが、本書を用いて社内での研修用の輪読会を開催してくれないかと依頼があり、 改めて読み直してみたので、改めてまとめや所感などを述べようと思う。

どのような書籍か

全体を俯瞰して感想をまとめるのであれば、筋道を立てて輪読や精読するのに向いている本だと感じた。 その根拠は以下のようなものである。
・目次がしっかりしていて、目次から凡その話の流れが汲み取れる
・Chapter1で全体感を伝え、その後の章でも順序立てて話が広がっていくので分かりやすい
・重要な単語についての説明が明確になされており、最後まで表記揺れなく読める
・章を追うごとに論点が個人から組織へと拡大していき、理解しやすい
・大事な単語や文言がきちんとまとまっており、筆者の癖が読み取りやすい
・参考文献がしばしば登場するので論理的で知識を広げるきっかけがある

きちんと筆者の言葉の意図を紐解きながら忠実に精読していけば、しっかり読み込める本となっているように感じた。

エンジニアリング組織論への招待 ~不確実性に向き合う思考と組織のリファクタリング | 広木 大地 |本 | 通販 | Amazon

概要

内容について個人的に一番注目したいのは「Chapter1 思考のリファクタリング」である。

まず本書が扱うのは個人または組織で「エンジニアリング」を行うための思考法である。
本書では、エンジニアリングとは、不確実性を下げ、情報を生み出す過程であり、問題解決や物事の実現を行う科学分野であると述べられている。

Chapter1ではまず全体感について、重要な単語や根底となる思想について触れられている。

分からないものや問題が発生する場合、それは不確実性がある事がその大きな要因である。 具体的に納期や手順、個人のタスクなどが明確な場合、不明瞭なものはないので不安や問題の可能性は低くなる。
本書でもっともよく使われる単語である「不確実性」とは、
・未来は分からないという環境不確実性
・他人への伝達や行動が全てを掌握出来ないというコミュニケーション不確実性
の2つがあり、
これを下げること、つまり情報を生み出すことが不確実性を下げる手段であるとしている。

本書は一貫してこの不確実性へのアプローチを主として説明してくれている。
組織の中で各々が見えている問題だけへの局所的合理性が、組織全体の合理性とかけ離れてしまうことで各々が衝突してしまったり、問題が解決できなかったりする。 自分自身が何に囚われ、合理的な判断ができなくなってしまうかについて考えるのと共に、どの様にこの不確実性を下げ、組織全体が自律した組織として機能するようにすればよいか論じてくれている本となっている。

まとめ

まずChapter1だけでも精読してみる価値があると感じた。
分かりやすい例えや、他の書籍などへの紹介も含め、自分自身が普段身の回りで起こっている問題に対しての置き換えやアプローチが出来る実践的な書籍のように思える。 組織に所属したばかりの新卒が読むのには少々実感が湧かないかもしれないが、2〜3年目以降の社会人は業種問わず読む価値のある本だと思う。

最後に一つだけ欠点を挙げるとすれば、多くの参考文献を文中で紹介してくれているので、奥付前に参考文献一覧を載せてくれなかった点が惜しい。